[レポート] Lookerセッション:ますます重要になるデータエクスペリエンス- Looker: BEACON Japan 2020 #BeaconJapan
Looker社によるロードマップ、顧客事例、パートナー企業によるセッションが堪能出来るデジタルイベント『BEACON Japan 2020』が2020年09月03日から2020年09月24日までの毎週木曜日、計4日間に渡り開催されています。
当エントリでは、その中から2020年09月10日に発表された「Lookerセッション:ますます重要になるデータエクスペリエンス」のレポートをお届けします。
目次
セッション概要
公式ページで紹介されているセッションの概要情報は以下の通りです。
登壇者:
・蓮池 拓哉 - Looker 事業本部 カスタマーエンジニア, グーグル・クラウド・ジャパン合同会社
発表内容:
データの価値を最大限に活かす為には、既存のツールやソリューションをワークフローへ組み込むことが必要となります。本セッションでは、最新データエクスペリエンスの実例や効率化の向上をどのように実現できるのかを中心にご説明します。
セッションレポート
ここからは、当日に公開されたセッションの内容についてレポートします。
イベントのセッション動画については下記リンクにてアクセス可能です。
「データエクスペリエンス」とは
米国の調査会社ガートナーのレポートに拠ると、BIのトレンドとして「クエリやレポートに労力を費やすこれまでのBI環境から脱却し、業務フローとデジタルソリューションに統合された分析に大きくシフトしていくことでしょう」とレポートされています。本トピックを進めていく上で、このトレンドは非常に重要なものとなります。コストやリソースの投資先が変わっていくことは、ビジネスサイドのニーズが変わっている、ということでもあります。そこでデータエクスペリエンスが重要となっていくのです。
では「データエクスペリエンスとはなにか?」ということですが、これは読んで時の如く「データを使う体験価値」のことを表しています。Lookerのミッションは、皆様がデータをよりスマートに活用出来るように支援することです。それを実現するために、ユーザーの皆様がその時々で最も効果的な方法でデータを利用出来る必要があると考えています。
これは、先程のガートナーからの引用にある「単なるレポーティング」ではなく「それ以上の何か」というところにもマッチしますし、レポーティングだけに留まらないことで大きな価値を与えることが出来るようになっていくと考えています。
また、もう一つ重要なことは、データエクスペリエンスを考える場合は使う側の視点に立って定義をするべき、という点です。データ分析やダッシュボードを考えるときに、しばしば「こう見せたい」「うちのビジネスモデルでは見せなければいけないものはこれだ」という"作成者の視点"でものを構築しがちです。これはKPIマネージメントの観点やデータ分析者の視点からすると過不足ないものだったりするのですが、ダッシュボードや様々なKPI、データが現場担当者の実際の業務と結び付きづらくなってしまうケースが多く見られます。
そんなことから、マネージメントや経営層の一部の人間しかダッシュボードを見ていない、という状態になってしまい、データ利活用が現場担当者の"自分ごと"にならなくなってきてしまいます。データエクスペリエンスを考える場合には、データコンシューマー、つまりデータ利用者側の観点で定義するのが非常に大事になってくるのです。
エクスペリエンスがもたらす影響
では、このエクスペリエンスが正しく実現されているということが何故大事なのか、ということを考えてみたいと思います。別の調査会社であるForrester社のレポートでは「インサイトドリブンビジネスは、戦略的かつ大規模にデジタルインサイトの活用や実装を行い、成長を促進し、差別化されたエクスペリエンス、製品、サービスを作り出します。」と報告されています。優れたデータエクスペリエンスを提供することにより、ビジネスをデータドリブンという過去の実績を振り返るものから、洞察から未来を予測し動いていくものに切り替えることによってマーケットの特異性・優位性を作り出す事に繋がるのです。
そして、その結果として文化と呼ばれてきて久しい激動の現代社会でも、2.3倍もの高い確率で良い成果をもたらすと言われています。
データエクスペリエンスに必要な要素
現実世界に目を向けて、多くのお客様の事例を深く振り返っていくと、様々なデータ活用の方法から、大きく4つのデータエクスペリエンスを構成する要素があると私達は考えています。
1つ目は、ダッシュボード機能やレポーティングツールに代表される最新のBI及び分析の機能になります。これらの機能を使って、誰もが容易にリアルタイムにデータに触れ、分析し、ビジネスの意思決定に利用することが出来ます。更に深い分析やデータ活用、データエクスペリエンスの発展の入り口になるとても重要な機能ですが、エクスペリエンスを構成する1つの要素に過ぎません。
2つ目の要素は、インサイトの統合です。皆さんの日々の活動の中で、データを利用するたびにBIツールにログインし、ダッシュボードを開き、データを探し、インサイトを得るというステップを毎回実施するのは余程普段からデータ慣れ親しんでおり、データが好きな人で無ければ億劫で煩わしいものではないでしょうか。日々活動を行っている場所や利用しているツールにデータやインサイトが連携されていて、意識しなくても情報が目に飛び込んできたら自然とデータを使っていくことが出来ると思いませんか?データを使うために皆さんが合わせるのでは無く、皆さんに合わせてデータが届けられる、というのが重要になってくるのです。
3つ目は「データ主導のワークフロー」です。データの変化をリアルタイムに察知し、それをトリガーに業務フローを回していくことで効果的なアクションを最適なタイミングで効率良く実施していくことが出来るようになります。
最後の要素が「カスタムアプリケーション」です。近年では、多くのものがWeb上で動いており、その中では データが利用されているケースが多くなってきていますので、データを利用するシーンや利用する人のレベルも様々になってきています。そのため、それぞれのレベルや目的に合わせた使い勝手の良いアプリケーションを用意してあげるのも必要になってきます。
最新のBIおよび分析
それでは、ここからは個別の要素を深掘っていきたいと思います。
まずは「最新のBI及び分析」です。データ利用やBIと言われると、皆さんがイメージする最も馴染みのあるデータ分析を行う上での要素になります。これは分析のスタート地点となる必要な情報が網羅されたレポートとダッシュボードをリアルタイムに提供することが必要になってくるので、従来型のBIではなく、最新のBIであることが重要になってきます。深堀り出来るデータに限界があり、様々な角度や切り口のビジネス上での質問に回答が出来ないものや、数日前に抽出・集計されたデータから導き出された分析では役に立ちません。
必要な時に正確なデータにアクセス出来ることにより、より良い意思決定をタイムリーに実施していく事が出来るようになるのです。そのために必要なのは、分析に必要な全てのデータがいつでも簡単に探索出来る状態にあるという点です。
ピクシブ様事例
ここでユーザー様の事例を紹介したいと思います。イラストコミュニケーションサービスを運営するピクシブ様の事例です。ピクシブ様では、メインの「イラストコミュニケーションサービス」だけでなく、コミックや小説など多くのサービスを運営されており、複数のサービスをご利用になられるユーザー様も増えている状況でユーザーを軸にした分析が重要となっていました。そのため、各プロダクトに閉じたデータ分析だけでなくプロダクト横断のデータ分析が必要とされて来ていました。
ネットネイティブの企業様ではありますが、全てのメンバーが同じレベルでデータ構造を理解し、DWHからデータを抽出するスキルがある訳ではありませんでしたが、Lookerを利用することでデータ構造やSQLに詳しくない非エンジニアメンバーでも正確かつタイムリーにデータを分析し、施策提案を実現することが出来るようになっていきました。また、定義が一元管理されていることで、各プロダクトに主導権を渡した状態でも、プロダクトを横断したデータ分析を同じレベル、正確性で行える環境を実現されております。
そして、データを使う全てのメンバーが同じツールを利用しているという状況になることで、データ活用の社内文化形成が促進されました。
インサイトの統合
次に深掘っていくのは「インサイトの統合」です。
日々の業務の中で、必要なタイミングや場所に必要な情報を意識せずとも連携・集約され、シームレスに確認することが出来ることで、各ツールのエクスペリエンスが向上するとともに、業務効率全体が向上・効率化されていきます。皆さんも多くの場面で意識せずともデータに基づく意思決定を行っているのです。
勘や経験などに基づいて判断していることも、ある種皆さんの過去の実績データを元にした意思決定なのかも知れません。これが感覚的なものではなく、正確に見える形で、皆さんの目の前に、常に表示されていることによって、よりタイムリーで正確かつ効率的な意思決定を行っていくことが出来るようになっていくのです。
皆さんの日々の活動のあらゆる場所で意識せずとも文脈に沿った形で示唆に富んだ情報が利用出来ることが重要なポイントになってきます。
SmartHR様
ここでのお客様事例はSmartHR様になります。SmartHR様は、人事労務業務に必要なツールをクラウドで提供されていらっしゃるSaaS事業者様です。SaaSビジネスモデルは売り切りの形ではないため、お客様の状態を契約内容から自社のサービスの利用状況まで一貫して常に正しく把握しておくことが重要になります。そんな中、同じお客様の状況を把握しなければいけない中で、部門が異なると見ているツール、使用しているツールが異なるという状況になるために、コミュニケーションコストが重なり、課題となっていました。
そこで、業務フローが集約されているSalesforceに情報を集約することで、コミュニケーションコストの改善を図られていらっしゃいました。顧客に関する全てのデータがSalesforceに入っている訳ではないため、散在したデータを集め、業務フローに合わせて表示するためにLookerのレポートをSalesforce内の必要な場所に埋め込んでいくことで必要な情報に必要なタイミングでコスト無く到達する事が可能になり、最適な提案をお客様にお届け出来る体制を築けていると伺っております。
データ主導のワークフロー
3つ目は「データ主導のワークフロー」です。
リアルタイムのデータにより、変化を瞬時に察知し、それをトリガーに業務フローを回していくことでより効果的なアクションを、最適なタイミングで効率良く実施していくことが出来るようになります。まずはの分析から始まり、発展していくとそのトリガーを自動的にしていくことで効率を上げていくことも出来ます。BIでの分析だけでなくその結果を次のアクションにシームレスに繋げていくことで、業務効率を上げ、時間やコストを削減し、更には施策効果の向上に繋げていくことも出来ます。
JINS様事例
ここではJINS様の事例を見ていきましょう。JINS様はアイウェアの製造・販売を行っている企業です。自社のデータとLINEのデータを組み合わせた分析を行っており、LINE公式アカウントの施策効果向上に取り組んでいます。自社データとLINEのデータを組み合わせた結果から導き出されたセグメントに該当するユーザーに向け、施策を行うために分析結果をLookerからLINEにシームレスに連携し、顧客評価・施策計画・アクションまでを一貫したオペレーションとして実現することでPDCAサイクルを高速化し、キャンペーン効率を高めています。
JINS様では、担当者自身で分析をされていらっしゃいますが、セグメント分析手法が定型化出来るようなケースであれば、一次分析に人手を挟まなくてもデータ連携されたタイミングでデータの変更を検知してアラートを出しそれを切っ掛けに次のフローを実行する...といった「自動オペレーション」を連携することでより一層の効率化を図れると考えています。
カスタムアプリケーション
最後の要素として「カスタムアプリケーション」に触れていきたいと思います。
カスタムアプリケーションでは、利用者の視点や、ユースケースに焦点を絞って最適化したデータエクスペリエンスを構築します。
特定のユースケースに特化した最適なエクスペリエンスを構築することで、データエクスペリエンスによる効果・効率を最大化していきます。大きなインパクトを与えることが出来るシナリオで実行力があり、実用的なアプリケーションを構築することが重要です。利用者は、データのことは意識せず、自分が何をするかに集中することが出来るようになっています。
Top Broadcaster様事例
海外の事例として大手放送局:Top Broadcaster様の事例を紹介します。この放送局様では、営業担当者のために広告の販売価格がリアルタイムに確認出来るアプリケーションを構築し、提供することで営業担当者は時間や市場動向に影響されず、最適な価格で販売されていることを確認出来るようになりました。
不必要に高い金額で広告枠を販売してしまった場合、価格に見合うコストを出すのは難しいのですが、リアルタイムに最適な価格を確認することが可能となることにより、効果に合わせたディスカウントの提案などをタイムリーに実施することが出来るようになっています。
全ての要素の統合
全ての要素を統合したケースとしてGuru様の事例を紹介します。Guruは企業にある社内ナレッジを継続してメンテナンス・共有していくことが可能な知識管理ソリューションです。Guruのサービス内では、顧客向けに複数のデータエクスペリエンスを提供しています。
最新のBI及び分析
1つ目は、最新のBI機能としてLookerで作成されたダッシュボードが「Analyticsダッシュボード」としてGuru様のプロダクトに埋め込まれています。とてもシンプルな機能ですが、重要な機能で投稿数や閲覧数、リアクションの状況などからサービスの利用状況が様々な角度から分析する事が出来るようになっています。
インサイトの統合
次に、インサイトの統合として、ランディングページに各種スコアが表示されるようになっています。これも、Lookerを使って集計した結果を元に作成しており、自分の記事への評価や記事の検証数が多いユーザーと投稿数等を表示しています。凝ったグラフやダッシュボードなどではないですが、このように興味がありそうな情報を目に留まるところに表示してあげることで、示唆を与え、このサービス上で次に何をすべきかを積極的にユーザーに考えさせ、利用率向上などに繋げることも可能になっていきます。
データ主導のワークフロー
データを元にしたワークフローの構築もされており、Slack連携を行うことで、Guru上で記事が増えたことをSlack経由で通知し、記事の検証などGuruの利用を促すワークフローを自動で実現する事が出来、離脱気味になっているユーザーに自動的に通知を送り、再利用開始を促す施策を打つ事が出来るようにもなっています。
カスタムアプリケーション
最後が「カスタムアプリケーション」で、情報共有基盤を利用するユーザーが利用しやすくなるように、様々な場所にシームレスにデータを展開していくことでデータエクスペリエンスだけでなく、ツールのエクスペリエンスの向上にも繋げていくことが可能になっているGuru様のサービスそのものがカスタムアプリケーションと言えるのではないでしょうか。
重要なポイント
本トピックでは、ダッシュボードやBIツールは「ユーザーに必要なデータを提供するための1つのピース」でしかないということ、より大きな成果を得るためには「最適なデータエクスペリエンスを構築する必要があるということ、データエクスペリエンスには様々な形態や種類があり、利用者視点で設計する必要があるため、利用者のニーズを実現できる柔軟なプラットフォームが必要となることを、顧客事例を交えて紹介させて頂きました。
まとめ
という訳で、「Lookerセッション:ますます重要になるデータエクスペリエンス」の内容紹介エントリでした。
当該セッションでは多くの事例も合わせて紹介されていましたが、それらの内容を見る限り、やはり「データエクスペリエンス」に関する対応はとても重要な割合を占めるものであり、そこに対してLookerは効果的にアプローチを行える幾つもの重要な機能を兼ね備えているのだなぁと改めて思いました。